もういちどプロローグ

 着慣れた制服に、買い替えたローファー。
 ほんの少しの変化が新たな季節の訪れを実感させて、不安とドキドキがわたしの身体を巡っていく。

 春。新学期。
 出会いの季節だとか、別れの季節だとか、そういう言葉で飾り付けられるけれど、今年のわたしにとって、この春はそんなに特別なものじゃない。
 部活には入っていないから後輩とは縁がないし、高校生になってからは転校生なんてものにも縁がない。今日も屋上での練習は普通にあるし、寧ろ気分としては、春休みの間途切れていた日常がやっと戻ってきたっていう気持ちの方が大きいかも。

 ただ、そんな日常にも、ほんのちょっとの変化はある。それはこの買い替えたローファーだったり、配信を見てくれる人の数だったり……。

「あっ、みのりちゃん。おはよう」
「おはよう、みのり。今日はちょっと遅めじゃない?」

 例えばそう、クラス替えだったり。

「——おはよう、こはねちゃん、志歩ちゃん!! 今日は朝練ないからこの時間に来たんだ〜」

 そう言いながら、2人と並んで正門を抜ける。普段はわたしだけ朝練があるから、こうやって2人と登校のタイミングが合うのは珍しい。遥ちゃんたちと屋上で過ごす朝も好きだけど、こうやって2人と教室に向かう朝も、特別感があって大好きだったりする。

「でも、こうやって皆で教室に行くのも最後かもなぁ……」
「確かに、クラスが変わったら行く教室もバラバラになっちゃうもんね」
「そうなの! 『遥ちゃんと同じクラスになれるかも!』とか思ったりもしたけど、やっぱり2人と離れ離れになるのは寂しいなぁ……」

 中庭を歩く他の子たちも、どことなくそわそわしているように見えるのは、きっとそんな小さな別れを感じ取ってるからかもしれない。
 勿論わたしを巡る不安とドキドキも、そこから来ていて。別に教室に行けば会えるわけだし、下駄箱までは一緒なわけだし、転校や卒業に比べれば全然かわいいお別れではあるんだけど……それでも朝のちょっとの時間とか、授業の後の休み時間とかにお話ができなくなるのは、やっぱり寂しいものがある。
 ……まあ、でも。

「でもそんなに気にしなくてもいいんじゃない? お昼とかは一緒に食べれるわけだし、外で遊べばいい話だし。……それに、まだ別々のクラスになるって決まったわけでもないでしょ」

 わたしの台詞を奪っていったのは、志歩ちゃんだった。
 思わずこはねちゃんの方に顔を向けると、同じように不思議そうな顔。思ったことは同じみたい。

「……何?」
「いや、なんというか……」
「志歩ちゃんからそういう言葉が出てくるの、ちょっと意外だなって思って」
「……ふーん。私がこんなこと言っちゃいけないんだ」
「「そ、そんなことは……!!」」

 わざとらしく拗ねる志歩ちゃんを、二人で慌ててフォロー。その様子がなんだかおかしくて、誰からともなく笑い合う。
 そんなうちにいつの間にか周りの喧騒も大きくなって、下駄箱前に着いたことに気付いた。……新しいクラス割は下駄箱の入口に掲示されている。わたしたちの新しい「日常」が、ここから始まる。

「みのりだけ違うクラスだったりして」
「そ、そんな!! でもあり得るかも……!! もしそうなっても一緒にお昼ごはん食べようね!!」
「大丈夫だよ。もしそうなったら毎日2人で遊びに行くね」
「まあ、そうだね。その時はちゃんと遊びに行くよ。……じゃ、行こっか」

 いつも通りの気持ちをもういっこ積み重ねて。
 丁寧に貼られた模造紙の前へ、わたしたちはで歩き出した。

- Afterword -
2023/02/26 投稿作品

プロセカWebオンリーイベント『Our Untitle3』の告知に合わせ投稿した作品です。
OU2にてみのはるアンソロを頒布させていただいたため、
サークル主・アンソロ主催者として次回開催の告知に協力させていただいたものになります。

この頃はまだ定時制絡みのイベントストーリーが公開されておらず、
作品の内容も全日制での進級を想定したものとなっています。
こんな始業式を迎える未来も、どこかには存在していたのでしょうか。
正史とは異なる物語にもなり得るところが、二次創作の面白いところですね。