レイニー・ドームにふたりきり

「……雨、強いね」
「うん……教科書とか濡れないといいなぁ」
「今日は夜までこんな感じらしいし、頑張って帰るしかないね」

 そんなことをみのりと言い合いながら、持ってきた青い傘を差す。
 ……雨は、あまり好きじゃない。濡れるから風邪をひきそうになるし、ランニングなんかの予定も崩れる。低気圧だと気持ちも沈むし、それに……

「――、せっ――と思っ――に」

 雨の日は、みのりを遠く感じる。
 傘が邪魔で顔もよく見えないし、雨音で声も聞き取りにくい。
 ……別に毎日話してるからいいけど……いいけど、なんとなく、嫌になる。

「ごめんみのり、ちょっと声が聞こえないかも」
「――!? ごめ―ね、もうち――と大―い声で――ね!」

 さっきよりは聞こえるけど、やっぱりちょっと聞き取りにくい。
 ……なんだか面白くない。せっかく、みのりと一緒に帰れる日なのに……。


 なんて考えた直後。
 ひと際強い風が吹いて。

「ひゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 みのりの傘があられもない姿になった。


「み、みのり!?」
「か、傘!! わたしの傘ぁぁ~!!」

 完全に骨が駄目になってしまった傘を片手に、今にも崩れ落ちそうなみのり。
 わ、私が変なこと考えたから?とにかくこのままだとみのりが風邪ひいちゃう。私は折り畳み傘持ってるし、それなら……。

「とりあえず私の傘貸すよ、みのり。私は折り畳み――」
「ほ、本当!? ありがとう遥ちゃん!」

 全部言い終わるより早く、当然折り畳み傘を出す間もなく、みのりが私の傘に飛び込んできた。
 ――これ、これって。

「うう……お気に入りの傘だったんだけどなぁ……」
 みのりの声がよく聞こえる。みのりのしょんぼりした顔が、よく見える。むしろ雨のせいで、世界に2人だけしかいないような錯覚すら覚えて。

「あれ、遥ちゃんどうしたの? わたし何か変なこと……っ!!」
 どうやら、みのりも今の状況に気付いたらしい。
 あわてて飛び出そうとするみのりの腕を全力で掴む。

「待ってみのり! びしょ濡れになっちゃうって!!」
「で、でも!! 遥ちゃんと相合傘だなんて、そんなの畏れ多すぎるよ!!」
「この雨だと風邪ひいちゃうよ!!」

 必死に説得して、なんとかみのりを傘に押しとどめた。
 とはいえ、変に緊張してるのは私も同じで……雨音だけが支配する帰り道を、私たちはただただ無言で歩き続ける。

 ――でも不思議と、嫌な感じはしない。
 明日も雨にならないかな、なんて考えながら、思い切ってみのりの右手に指を絡めた。

- Afterword -
2021/04/16 「みのはる100ラリー」13本目

作品の雰囲気もなのですが、特にタイトルが気に入っている作品です。
この頃の作品は今に比べてタイトルがいいなと思う頻度が高くて、
私のワードセンスはこの頃にもう枯れてしまったのかと思っていたのですが……。
サイトへのまとめ作業をしていて良いタイトルが多い理由が分かりました。
多分数打ってたからアタリも多かっただけです。

相合傘はベタながらもとても素敵なシチュエーションですよね。
この状態に持っていく方法はいろいろあるかと思うのですが、
今回はみのりちゃんの傘に犠牲になってもらいました。
みのりちゃんには申し訳ないですが、不運属性はこういうときとても重宝します。