わたしの夢には貴女がたりない
『明日も朝練あるし、そろそろ寝よっか』
『そうだね。おやすみ、遥ちゃん』
『うん。おやすみ、みのり』
それっきり、遥ちゃんからLINEは来なくなった。きっともう寝ちゃったんだと思う。おやすみって言ったから当たり前だよね。
わたしは……わたしは、まだ眠れない。寝付けない。
遥ちゃんと一緒にいられることが当たり前になって、わたしは少しおかしくなっちゃった。
遥ちゃんと食べるお昼ご飯も、遥ちゃんとする練習も、遥ちゃんと歩く帰り道も、遥ちゃんと送り合うLINEのメッセージも。どれもがとっても楽しくて、昔は想像もできなかったくらい、幸せに感じる。
……幸せに感じるのに。
今は、「さみしい」って思っちゃう、よくばりなわたしがいる。
明日になったら、また一緒にいられる。一緒にご飯を食べて、一緒に練習して、一緒に帰って、一緒にメッセージを送り合って。きっと明日も今日と同じ、今日より幸せな1日になるんだと思う。
……でも、本当に明日はあるの? 明日わたしの心臓が止まっちゃうかもしれない。明日遥ちゃんが車に轢かれちゃうかもしれない。さっきの「おやすみ」が最後のやりとりじゃないって、本当に言い切れるのかな?
何より、「明日」じゃなくて「今」、遥ちゃんに会いたくて。
どうしてこんなに欲しがりになっちゃったんだろう。遥ちゃんの隣にいられることは幸せで、最初はそれだけで気絶しちゃいそうなくらい満たされてたはずなのに。
今はほんのちょっとの「足りない」が、ちくちくと刺さって寝かせてくれない。
きっと「もう少しだけお喋りしたい」って言えば、遥ちゃんは笑って応えてくれる。
きっと「遥ちゃんの声が聞きたい」って言えば、遥ちゃんはやさしい声で応えてくれる。
でも、これはわたしのわがままだから。こんなことで、遥ちゃんを困らせたくない。
……ああ、でも。さみしいな。
『みのり!』
秒針の音だけが響く部屋の中で、遥ちゃんの笑顔がフラッシュバックする。
かわいくて、やさしくて、だいすきな遥ちゃん。
そんな遥ちゃんがわたしの胸をきゅうっと締めつけて、わたしは一人泣きそうになった。
ごめんね。
たすけて、遥ちゃん。
わたしもう、ひとりじゃ眠れない。
2021/04/17 「みのはる100ラリー」15本目
この作品に限らず、この時期の作品にはしばしばLINEが登場するのですが、
最近の若い子はLINEとか使わないらしいですね。
インスタのDM機能でチャットから通話までしてしまうそうです。
時代の流れとは恐ろしい。きっとこの文面すらもあと数年もあれば時代遅れになるのでしょう。
というわけで、この恐ろしい事実に気付くまでは時代遅れのLINEが作品に登場しています。
気付いた瞬間からぴたりとLINEの文字が出てこなくなるので、
お暇な方はどのタイミングで気付いたのか推理してみてください。
閑話休題。
文字数は少ないですが、タイトルといい雰囲気といい、割と気に入ってる類の作品ではあります。
こういう雰囲気の作品は結構好みなので、
またどこかでふと書いてしまうこともあるかもしれませんね。