ドレスアップドールの反撃
「かわいい……! やっぱり遥ちゃんはこういう衣装もとっても似合うね!」
「さっすがみのりちゃん! 遥ちゃんのことならコーディネートもばっちりだね!!」
「あ、あの……」
「じゃあ次は……これ! この衣装は黒系の方が遥ちゃんに似合うと思うんだ~! はい!」
「あ、ありがと……」
はしゃぐみのりとリンから目を逸らしつつ、必死にミクとルカに視線で助けを求める。
「遥ちゃん、とっても可愛いよ♪」
「ええ、こういう遥ちゃんも悪くないわね」
あ、駄目だこれ。今この場に私の味方はいない。
今度は恨みの視線を向けながら、私は成す術もなく着せ替え人形にされていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
事の発端は30分前。
「そういえば、ミクたちはステージの衣装ってどうしてるの?」
「そういえば教えたことなかったっけ。ステージ用の衣装部屋があって、そこから選んでるよ!」
「衣装部屋!? 見てみたい!」
「ふふっ、それじゃあ一緒に見に行こっか! 2人は時間、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ありがとう、ミク」
そういった経緯でセカイの衣装部屋へ。途中でリンとルカも合流して辿り着いたけど……ここが、信じられないくらい広い。
「ひ、広い……!」
「すごいね……これも全部、私たちの想いから生まれたの?」
「うーん、わたしもちゃんとは分かってないんだけど……ここの衣装にはちょっとだけ、他のセカイの想いも流れ込んでいるみたい」
なるほど。確かにこの制服みたいな衣装とか、プレゼントをあしらったこの衣装とか、あまり私たちとは繋がりにくい衣装も少なくない。
……最近は慣れ切っていたけど、本当にこの「セカイ」っていう場所は不思議なところだな……なんて思っていたところで、すごい勢いでみのりに肩を掴まれた。
「遥ちゃん、これ、着てみて」
圧が、強い。とても断れるような雰囲気じゃない。
言われるがままに着せ替えられ、鏡の前に立たされる。
……花のあしらわれたエプロンドレス。
すこしくすんだ、そして幻想的な緑色がとても
「「綺麗……」」
思わず、2人して同じことを呟いてしまう。
「ありがとうみのり。ステージではあまり着れないだろうけど、こういう衣装も良いね」
「えへへ……この衣装、遥ちゃんに似合いそうだなあって思って! ねえねえ、次はこの衣装も試してみない?」
まあ、もう1着くらいなら……。そう了承して、かれこれ30分。
私は完全に、彼女の着せ替え人形と化している。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
……結局、私が鏡の前から解放されたのは、そこからさらに30分後のことだった。
「つ、疲れた……」
「ごめんね遥ちゃん……途中から周りが見えなくなってて……!!」
「ううん、大丈夫。私も楽しかったし」
お姫様みたいなドレス風の衣装に、少し季節外れのもこもこ衣装。ちょっと近未来的な衣装から、直球なメイド服まで。
アイドルとはいえなかなか着たことのない衣装もあったし、普段試さないようなジャンルに挑戦する、というかされられることもできた。
……それに。
「みのりが楽しそうにしてたから、そんなに苦ではなかったかな」
「は、遥ちゃん……!」
まあ、もう少しペースはゆっくりでお願いしたかったけど……そんな思いは、私の中だけに留めておこう。
「ごめん、すっかり遅くなっちゃったね! じゃあそろそろ帰ろ……」
「みのり、待った」
帰ろうとするみのりの肩をわしづかみにする。逃がさない。
「は、遥ちゃん……?」
「今度はみのりの番だよ。とりあえずまずはこの衣装から始めてみようか」
「え、ええっ!? そ、それは……!?」
「あら、今度はみのりちゃんの番なの?それなら私もお手伝いしようかしら♪」
じりじりと後ずさるみのりの退路を、ルカが塞ぐ。
ナイス、ルカ。あとは……ミクとリンの方にも目くばせをする。意図を察してニコニコしているリンと……ミクは、あんなに悪い顔ができるんだ……。
「わたしもいろんな衣装のみのりちゃん、見てみたいな♪」
「み、ミクちゃん!?」
「うん! わたしもお手伝いしよっと!」
「リンちゃん!?」
「それじゃあみのり……覚悟はいい?」
「あ、あわわわわわわ……!!」
大丈夫。頑張って1時間で収めるから。
だからそれまではよろしくね、私の可愛いお人形さん?
2021/04/17 「みのはる100ラリー」17本目
ファッションのことはさっぱりなのに、こういう話はよく書いてしまいます。
やっぱり推しがいろんな格好しているのはシンプルに可愛いのですよね。
今後もジャンル問わず定期的に書いてしまうと思います。
ところでお題は「鏡」だったのですが、読み返してくるとほぼ関係ないですね。
まあそういうこともあるか。