それは嫉妬と悪戯心

「そういえば、昔『壁ドン』って流行ったよねぇ」
「ああ、そういえばそんなのあったね」

 愛莉ちゃんと雫ちゃんが来るまでの屋上。
 なんとなくそんなことを思い出して、遥ちゃんとぼーっと話していた。

「クラスでも流行って、みんなやってたなぁ」
「え、女の子同士で?」
「うん、わたしは見てるだけだったけど。やっぱり背が高い子とかがやるとかっこいいんだって」
「まあ、そんな感じはするよね。……雫とかがやったらかっこいいのかな」
「雫ちゃん……どうなんだろう?でもモデルのお仕事してた時の雫ちゃん、すっごくかっこよかったし……もしかしたらすごいのかも」

 雫ちゃんの壁ドン……。
 突然顔を真っ赤にする愛莉ちゃんの顔が浮かんだ。……うん、なんだか悪いこと考えてる気分になってきたから、これ以上はやめとこっと……。

「私はあんまりそういうことはやらなかったかなぁ」
「そうなの? ちょっと意外かも」
「そうだね。ASRUNでそういう話になっても不思議じゃなかった気がするけど。……そうだ、せっかくだしみのり、やってみてくれない?」
「………………へ?」

 わたしが、遥ちゃんに、壁ドン?

「わたしが?」
「うん」

 …………。


「ムリムリムリムリ!! ムリ、ムリ!! わたしには絶対ムリだよ!!」
「そ、そんなに……?」
「だってわたしそういうのやったことないし、しかも遥ちゃん相手にかっこよくなんて、わたしには荷が重すぎて……!!」
「そっか……」
「うん……ごめんね遥ちゃん……」
「ううん、大丈夫。無理させちゃうのはよくないしね。じゃあ代わりに私がみのりにやろうかな」
「はへ?」

 流れるように両脇を抱えられ、壁際に立たされる。

「え、え!? ま、待って遥ちゃん話が急で——!」


 抗議の暇もなく、どんっ、という音と一緒に遥ちゃんの腕に閉じ込められて。

「こんな感じ?……クラスの子たちと、どっちがかっこいい?」

 不敵に笑う遥ちゃんの顔が、とても近かった。


「ぴぃ……」
「み、みのり!? ごめんね私が悪かったね!? ちょっと、しっかりしてみのり、みのり——!!」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……何してんのよ」
「あ、愛莉。ちょっと、みのりが気絶しちゃって」
「耳、真っ赤だけど」
「……これ、これは」
「はぁ……まああんまりとやかくは言わないけど、みのりをからかうのも程々にしときなさいよ?」
「……はーい」

- Afterword -
2021/04/23 「みのはる100ラリー」29本目

嫉妬する子というのは可愛いものです。
普段は落ち着いた感じで振舞っている子がそれで思い切ったことをするなら尚のことです。
そういうお話です。

壁ドン、最近めっきり聞かなくなった気がしますが、まだ生きているんでしょうか?
今同じ企画をやったらお題に上がってこない気がします。
この時期だからこそ生み出せた作品ですね。