アイマイラブユー

 心の中に、知らないわたしが棲みついた。
 追い返しても追い返しても、いつの間にか戻ってきて。心の奥で、わがままばっかり言ってくる。
 わたしと同じ顔で、わたしをいつも困らせて。
 ……だからわたしは、早く、こんなわたしから逃げたい。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 遥ちゃんと2人きり、愛莉ちゃんと雫ちゃんを待つ屋上。
 スケジュール帳を真剣に見つめる遥ちゃんの横顔は、相変わらずかっこよくて。
 そう、遥ちゃんはかっこいい。いつも真剣にファンのみんなのことを考えてて、いっぱい努力してて、いつだって希望を諦めない。遥ちゃんはわたしの目標。こんなアイドルになりたいっていう、わたしの憧れ。

『憧れだけじゃ、いやだ』
 ――そうだね。胸を張って隣で踊れるくらい、わたしもがんばらないと。

『そういうことじゃないって、わかってるくせに』
 ――聞こえない。遥ちゃんは仲間で友達。わたしはそれでいいの。

『わたしはよくないよ』
 ――うるさい。変なこと言わないでよ。

『わたしは、遥ちゃんが――』

「うるさいってば!!」
 そんな自分の声で我に返る。不安そうな遥ちゃんの顔は、スケジュール帳じゃなくてわたしに向けられていた。

「みのり……?」
「……ごめんね。ちょっと、寝ぼけてたみたい」
「疲れてるんだったら今日は休んだ方が……」
「ううん、大丈夫! それより愛莉ちゃんと雫ちゃんはもう少しかかりそうだし、先にストレッチ始めちゃおう?」

 遥ちゃんの不安も、この息苦しさも、全部振り払うように立ち上がる。


『わたしは、遥ちゃんが大好きだから。憧れや友達としてじゃなくて……一人の、女の子として』
 そんなこと、言えるはずない。そんなこと、認められるはずがない。
 伝えたらきっと何かが壊れてしまうから。だから……遥ちゃんは、わたしの憧れ。この胸のドキドキは、夢みたいな景色に舞い上がってるだけ。


『でも、そんなの寂しいよ』
 ――帰ってこないでよ。わたしは、寂しくなんかないもん。遥ちゃんといられて、愛莉ちゃんと雫ちゃんも一緒になってアイドルができる。それだけで、わたしは幸せだから。

『……うそつき』

 ――その言葉は、聞こえないふりをして。もう一度わたしは、邪魔なわたしを追い出した。
 ……ほんとうの気持ちから、逃げるために。

- Afterword -
2021/05/09 「みのはる100ラリー」45本目

「憧れ」以外の感情に悩むみのりちゃんは、ある意味定番と言ってもいいかもしれません。
定番ですよね? 私以外も書いてますよね?
……もしかして私しか書いてない??

実際他の方が扱っている題材なのかはあまり意識していませんが、
少なくとも私は好きで、よく取り上げてしまう題材です。
他作品でも度々似たようなシチュエーションが出てくるかもしれませんが、
「あぁ、好きなんだなぁ」くらいの気持ちで読んでいただければ。