チヨコレイトは罪の味
「あれ? みのり、それは?」
「志歩ちゃんがくれたんだー! 北海道に旅行に行ったみたいで、そのお土産だって!」
「北海道に? すごいね……」
愛莉ちゃんと雫ちゃんを待つ屋上で、小さめの箱を鞄から出す。もらったのは、ちょっと高めの生チョコレート。他にも一歌ちゃんがご当地キティのキーホルダーをくれたり、咲希ちゃんが熊のTシャツをくれたりしたけど……「みんなで分けられるように」ってことで、志歩ちゃんはこれを選んできてくれたみたい。
「20粒あるから、1人5粒食べれるね!」
「5粒……は、ちょっと多いかな……1粒だけ貰ってもいい?」
「うん! ……でも、そうだよね……わたしも1粒だけにした方がいいかな?」
「そうだね、食べすぎも良くないし……1日1粒とかにすれば長く楽しめるかも」
「じゃあ、わたしもそれで!」
隅っこのチョコに、すうっと楊枝を刺して、一口。
……ほんのちょっとだけお酒の交じった大人の甘さが、口の中に広がっていく。
「……おいしい?」
「うん、おいしい……!」
生チョコだから、あっという間に溶けてなくなっちゃう。今日の分はこれでもうおしまい。残りはまた明日……明日……。
「…………」
「……もう1個くらいなら食べてもいいんじゃない?」
「ふぇっ!?」
「これくらいの大きさなら、1個くらいだったら変わらないと思うよ」
「えっ、いやっ、でも! ……本当に、だいじょうぶかな……?」
「うん、多分。それに、我慢しすぎるのもよくないよ」
……遥ちゃんがそう言うなら、大丈夫かな……?
今度はおそるおそる、隣のチョコに楊枝を通して、もう一口。
……さっきより甘く感じるのは、「罪の味」ってものなのかも……。
「……おいしい?」
「うん……『罪の味』がするよ……遥ちゃん……!」
「大げさだなぁ、みのりは」
……今日の練習は、いつもより頑張らないとなぁ……。遥ちゃんはああ言ってたけど、甘さに混ざって心が痛い……。悪いことしちゃった分、しっかり動かないと……!
「……ふふっ」
「は、遥ちゃん……?」
「みのり、口元にチョコついてるよ」
「えっ!?」
そ、そんな、恥ずかしい……! よくばっちゃったりチョコが付いてたり、今日は遥ちゃんに恥ずかしいところばっかり見られちゃってる……。
「は、遥ちゃん、チョコどの辺についてるかな?」
とりあえず拭かないと……ティッシュを取り出しながら遥ちゃんの方を見た、瞬間。
遥ちゃんの唇がわたしに触れて。
ぺろりと、くすぐったい感覚が口元に走った。
「…………え……?」
「……本当だ。甘くておいしいね」
ちょっぴりわるい笑顔で、遥ちゃんが笑った。
……やっと頭が追い付いてきて、かぁっと顔が熱くなる。ぴりぴりと甘い痺れが走って、頭が、くらくらする。
「それじゃあ、そろそろ柔軟始めようか」
何事もなかったかのように、いじわるな遥ちゃんが立ち上がる。
……1個くらいなら変わらないなら、もう1個欲張っても、きっと変わらないよね……?
「遥ちゃん」
「何?」
「その……もしかしたら、まだチョコがついてるかも……」
――遥ちゃんは、一瞬驚いた顔をして。
また、あのわるい笑顔で、微笑んだ。
「……みのりは、欲張りさんだね」
――甘いわたしは、チョコレイト。
熱に浮かされ、溶けていく。
2021/05/31 「みのはる100ラリー」71本目
『Darkness sympathizer』という曲があります。
バレンタインというイベントに惰性的に乗っかるわけではなく、
正面から向き合おうとする素敵な曲です。ぜひぜひ聴いてみていただければ。
ちなみに不意に思い出しただけでこの作品とは全く関係ありません。
そもそも別コンテンツの曲だし。
閑話休題。
確かこの作品は最後の2行のフレーズが思いついてそこから組み立てたのですが……。
当時の未熟さとかせっかちな性格とかが災いして、あまり活かしきれてない感じがしますね……。
今の私に比べてタイトルセンスもフレーズのセンスもあったのですが、
「数出すのが正義」みたいな考え方がいろいろとデバフになっていた気がします。
今ちゃんと組み立てれば、もう少しマシな内容に引き上げられるでしょうか。