Ms.REAPER

 例えば。
 10年前の桐谷遥と、今の桐谷遥が同じ人間かと聞かれると、私は少し自信がない。
 10年前の私はアイドルを目指そうとすら考えてない普通の女の子で、たとえそれが同じ「アイドルじゃない私」だったとしても、仲間と一緒にアイドルを目指そうとする今の私とは、別人な気がしてならない。

 例えば。
 半年前の私が生きていたかと言われると、私は少し自信がない。
 アイドルは、私の生きがいだった。皆に希望を届けるために、私はずっと走り続けてた。だからアイドルを辞めた私は――二度とステージに立てないことを「仕方ない」と無理やり納得するしかなかった私は、死ねないまま生きている、ゾンビみたいなものだったんだろう。


 そう考えると、そんな私を変えてくれたみのりは、私を殺した「死神」とも、言えるのかもしれない。

 さて、そんな死神は今日も、昨日までの私を殺しに来たみたい。

「遥ちゃんって、こういう感じの服って着たりしないの?」
 そう言うみのりの持つスマホを覗き込むと、そこには一着のワンピースの画像があった。ブラウンを基調にした落ち着いた色合いで……その、裾のフリルと胸元のリボンが、とてもかわいい。

「え、これ……? ちょっと私には可愛すぎるんじゃないかな……?」
 フリルなんていう概念とは随分疎遠になっていた私にとって、正直この服は刺激が強い。普段もどちらかというとシンプルで落ち着いた服を着ることが多いし、あまりこういった類は似合わない気がする。
 でも、みのりは引き下がらない。引き下がってくれない……。

「そんなことないよ! 確かにいつも遥ちゃんが着てる服とはちょっと雰囲気が違うけど、色合いが落ち着いてるから遥ちゃんにも合うと思う! フリルもそんなに主張が激しいわけじゃないから浮かないし、きっと似合うよ!!」
「そ、そうかな……?」

 最近やっと気付いてきたのだけれど、私に何かを勧めてくる時のみのりは、強い。
 多分それは私のことを考えて、できる限りの最適な答えを探し続けてくれていたからで、だからこそ見つけた答えに、強い自信を持っているからなんだと思う。
 それはとても嬉しいことで、普段はそうやってみのりに『殺されて』いるんだけど……でもフリルか……。


「遥ちゃん、いつも『すっきりしてるけど可愛い!』って感じだから、こういう可愛い服を着たら、もしかしたらもっと可愛くなるんじゃないかなって思って! その、遥ちゃんが苦手ならそれでいいんだけど……」

 ……本当に、みのりは、私のことをよく考えてくれる。

「……みのりは」
「?」
「みのりは、その……こういう服でも、本当に私に似合うと思う?」
「もちろん!! 遥ちゃんはどんな服でもきっと似合うし、この服は絶対似合うと思う!!」
「そっか」

 それなら、一度は着てみてもいいかな。
 なんて、思ってしまう。

 昨日までの価値観が塗り替えられる。
 昨日はあまり好きではなかった世界に、少しずつ惹かれていく。

「まあこれなら、殺されるのも悪くないかもね」
「えっ!? 遥ちゃん誰かに殺されちゃうの!? 大丈夫、その時はわたしが守るよ!!」
「大丈夫。私の話だから、気にしないで」

 だからこれからも、私の知らない言葉で、私を殺してみせてね。
 私の、可愛い死神さん。

- Afterword -
2020/11/08 「prsk2H創作デスマッチ#02」参加作品

2Hデスマッチへの投稿作品です。
これは2時間で死ぬ気で作品を書き上げて気合で投稿する企画です。何故そんなことを??

個人的に、結構後悔が残っている作品です。
元々この作品のタイトルは「Mr.REAPER」という個人的にすごくお気に入りの曲からとってきたものなのですが、
曲への想いに釣りあうだけの内容を作り切れなかったな、と。執筆時間2時間なので仕方ない部分もあるのですが……。
みのはるでやるかは分かりませんが、いつか改めてリベンジしたいなと思っています。

そしてこの作品、企画中文庫ページメーカーにベタ打ちして書いたせいで手元にテキストデータが無く、
わざわざ投稿した画像を見ながらテキストに起こしなおす羽目になりました。
わざわざ写経させるんじゃあないよ、後悔残ってる作品を。