Eyes
遥ちゃんは、とても綺麗な眼をしている。
宝石みたいな、なんて言い方はちょっとありがちかもしれないけど、蒼く澄んで、キラキラした眼をしている。
遥ちゃんがアイドルだった時から綺麗だって思ってたけど……遥ちゃんと一緒にいる時間が増えてきて、その眼に見惚れちゃうことが増えてきたかも。
それは昔のわたしが「アイドルとしての眼」しか見たことがなかったからで……わたしの知らなかった眼が、ちょっとずつ増えてきたから、なのかもしれない。
「お疲れ様。みのり、また上手になったね」
例えば、練習終わりの優しい眼。
遥ちゃんはいつも私を気遣ってくれる。それはアイドルとして希望を届けてた遥ちゃんとはちょっと違う姿で、でもすごく、暖かい。
「ペンギンパンケーキだって……かわいい……!!」
例えば、好きなものを前にした時の、うるうるした可愛い眼。
ペンギン。甘いもの。大好きなものを見たとき、遥ちゃんはたまにとっても幸せそうな顔をする。
そんな遥ちゃんの珍しい姿がわたしは大好きで、その後気付いて真っ赤になる遥ちゃんも含めて、見ているとわたしもとっても幸せな気持ちになる。
「え? みのり、お菓子忘れちゃったの? じゃあ……いたずらしちゃおうかな」
例えば、子供みたいないたずらっ子の眼。
それは、いつもの遥ちゃんからは想像もつかない程幼くてキラキラした眼で。
とっても可愛いけど、なんだかわたしの知らない「昔の遥ちゃん」を見てるみたいで、なんだかちょっとだけ、心がズキズキする。
「…………」
……例えばそれは舞台袖の、どこまでも澄んだ真剣な眼。
その眼はわたしが一番知らない眼で、だけどすごく、ドキドキしちゃう眼だった。
わたしは、遥ちゃんのことをまだ知らない。
遥ちゃんの嫌いな食べ物を知らない。
遥ちゃんの得意な科目を知らない。
遥ちゃんの初恋を知らない。
遥ちゃんが舞台に立つ前、あんな眼をしてたことも、ずっと、知らなかった。
遥ちゃんのことをもっと知りたい。
遥ちゃんの眼には、今何が映っているのかな。
あの遥ちゃんの真剣な眼に、わたしはちゃんと、映れているのかな。
遥ちゃんの見る景色が見たい。
「遥ちゃんの眼を、わたしに頂戴」
なんて、言ってもどうしようもないから。
せめて、隣に立って、同じ景色が見れますように。
◆ ◇ ◆
みのりは、とても綺麗な眼をしている。
透き通った灰色の眼は、元気で明るいみのりとは似ても似つかなくてちょっとびっくりするけど、その眼は見つめていると吸い込まれそうで……だから私は時々、みのりと上手く目を合わせられない。
「遥ちゃん、おはよう! 今日も頑張ろうね!!」
例えば朝一番の、元気でキラキラした眼。
それは私が一番よく見るみのりで、私が一番落ち着くみのりの眼。
気持ちが沈んでいても、みのりを見ていると心が軽くなって……ああ、この子は確かにアイドルなんだなって、実感する。
「ワン、ツー、スリー、フォー……!」
例えば、心に体が追いつかない、どこか不安そうな眼。
みのりには悪いけど、この時のみのりはすごく可愛い。やる気いっぱいのみのり、間違えちゃって焦るみのり、うまく体が動かないみのり……。
アイドルとしてはあまり良くないけど、こんなみのりをいつまでも眺めちゃうのは、さすがにみのりを甘やかしすぎ、なのかも。
「は、遥ちゃん!? い、イタズラは許してぇ……!!」
例えば、パニックになったときのうるうるした眼。
みのりは時々、小動物みたいな眼をする。
慌てる、パニックになるみのりはちょっと面白くて……何より、ちょっとだけいじめてみたくなってしまう。
そうしてもっとパニックになるみのりも、可愛い。
「…………」
……例えばそれは、時折見せる、どこまでも澄んだ真剣な眼。
その眼は私の一番知らない眼で、でもすごく、ドキドキしてしまう眼だった。
みのりは、優しい。
だからみのりがあんな眼をする時は、いつも誰かのことを考えてる時なんだと思う。
だからあの眼はみのりのどんな表情より綺麗で……その眼を見てると少しだけ、不安になる。
みのりは今、何を考えてるんだろう。
あの眼には、一体何が見えているんだろう。
その眼の先に……私は、映ってるのかな。
みのりが見ている景色が見たい。
「ねえ、みのりの眼を、私に頂戴」
なんて、変なことは言えないから。
私は、みのりのことをもっと知りたい。
2020/10/31 「prsk2H創作デスマッチ#01」参加作品
2Hデスマッチへの投稿作品です。
この企画は2時間という僅かな時間の中で、どうにか創作を絞り出して投稿する企画となっています。
どうしてそんなことをするんですか??
目や瞳に関するテーマや表現は、今でもよく重視してしまいます。銀鼠とか、夜明け色とか、いろいろ。
これに関してはとある方の影響だと思っていたのですが、
こうして見てみると、割と最初から瞳が描くものには惹かれていたのかもしれません。