SweetBerry
映画館で昨日公開の映画を見て、ネットで見つけたハンバーガー屋さんでランチ。地下街でショッピングなんかもしちゃったりして、そしておやつに、このあまおうパフェ!
非の打ちどころがない、完璧な休日。来るたびに思うけどやっぱり福岡はいいところだと思う。キラキラしてるし、なんでもあるし、何よりご飯が美味しい。本当に美味しい。
そんなわけで今日も気分最高なわたしだけど……どうやら向かいに座るスバルはそうでもないらしい。さっきから難しい顔をしてるっていうか……。スバルとも長い付き合いになってきたわたしには分かるけど、これは「嫌ではないけどなんか腑に落ちない」って感じの表情だ。スバルは考えすぎるところがあるからたまにこんな顔になる。
「どしたのスバル。あんまり悩んでると眉間の皺とれなくなるよ」
「余計なお世話。……ねえ、リリア。朝からずっと思ってたんだけどさ」
「ん?」
「これ全部熊本ででき……むぐっ」
スバルの指摘が最後までたどり着くことはなった。わたしが不届き者の口にいちごを突っ込んだからだ。本当になんてことを言いだすんだこの南曜スバルとかいう奴は。
当の本人はしばらくもごもごと大きなあまおうを味わって、そうして空いた口から今度は小さく息をついた。
「前言撤回。あまおうは福岡で食べるのが一番いいかも」
「あまおう以外だって福岡がいいでしょー!?」
「いやだって、別に映画もファッションのお店も熊本駅まで行けばあるし、ハンバーガー屋さんも探もごごっ、ちょっとそのいちご突っ込んでくるのやめてってば!!」
「ちょっといい加減にしてよスバル。このままだとわたしのいちご無くなっちゃうじゃん!」
「勝手に食べさせてきてるのはリリアの方でしょ!?」
相変わらず不服そうなスバルに、今度はわたしが大きなため息。何もわかってない目の前の不届き者にフォークをピッと向けて、福岡の良さをレクチャーする。
「あのねスバル。福岡っていうのは九州で一番大きい都市なんだよ」
「うん、まあ、それはそう」
「実質東京。福岡は九州の東京と言っても過言じゃないんだよ」
「それは流石に過言な気も……いやまあうん、一旦いいや。それで?」
「……」
「……えっ待って、それだけ?」
「それだけって何さ!? キラキラしたおっきな街で遊ぶのってそれだけで楽しいんだよ!? 福岡はご飯も美味しいし!!」
わたしの勢いに押されたスバルはもう一度ため息をついて、そして今度は小さく笑う。
「……スバル?」
「ごめんごめん。まあ、言いたいことは分かった。でもさ……」
「でも?」
「それって結局、買い物自体は熊本でもいいってこもがもが!!」
いや何も分かってない!! 何も分かってないじゃん!!
三度情緒や風情をぶち壊しかけた愚か者の口に、わたしは今日一番大きいいちごを突っ込んだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
新幹線の座席に着いて、大きく息を吐く。
流石にいろいろはしゃぎすぎたかもしれない。身体中重い、汗もめっちゃかいたし、はやくかえりたい……。
満身創痍で椅子に沈み込みながら、あちこち振り回してしまったスバルの様子が不安になって隣の席に目をやって、そこで夜明け色の瞳と目が合った。
「……寝ててもいいよ。着いたらちゃんと起こすから」
「んーん、大丈夫。疲れたけど眠くはないし。……ねえ、スバル」
「何?」
「わざわざ福岡まで引っ張り出しちゃってごめん」
こうして全部落ち着いて冷静に考えると、確かにほとんど熊本でもよかった気がする。わたしとしてはやっぱり特別な感じがするし楽しかったんだけど、正直わざわざスバルを巻き込んでまで来る必要があったかというと結構怪しい。
なんだかそれがすごくばつが悪かったけど……当のスバルは、心底不思議そうに首を傾げた。
「え、全然気にしてないけど……」
「えっ……えっ!? でも途中『熊本でよくない?』って言ってたし!!」
「あー、あれはごめん、ちょっと不安になっただけ。ほら、リリアにとっては行き来するための交通費だけでも馬鹿にならないし。それなら熊本で同じことした方が余計なこと考えなくて済むのかなって」
「じゃあやっぱり」
「でも一日リリアの様子を見てたらこれはこれで意味があるんだなって分かったし。リリアがちゃんと楽しそうだったからまあいいかな」
「なんでそこでわたしが出てくるのさ」
「? リリアが行きたいって言ったんだからリリアが楽しめたかが一番大事じゃない?」
意味が分からないみたいな顔をしてるけど、意味が分かんないのはわたしの方だ。だって、その理屈だと。
「……スバルはどうなの」
「どう、って?」
「わたしだけ楽しくても意味ないじゃん。スバルはどうだったの」
「え、楽しかったけど……いろんなリリアが見れたし」
…………。
なんだか、さっき以上にどっと疲れが湧いてきた。馬鹿らしいというかなんというか、なるほど君はそういうやつなんだなっていうか。
「ごめん、やっぱり眠くなってきたかも。着いたら起こして」
「はいはい、ゆっくりおやすみ」
「……ねえ、スバル。今度はスバルがやりたいことをやりに行こう。わたしばっかりって、なんか気持ち悪いし」
「え、何急に? うーん、やりたいことかぁ……」
腕を組んで考えるスバルを視界に収めようとして、でも瞼が重すぎて諦める。思考と聴覚だけはまだ手放さないからな、なんてせめてものの抵抗はなんとか功を奏したみたい。永遠に似た数秒間の後、スバルの答えを耳に捉えた。
「じゃあ、いちご狩り行こうよ。おっきいあまおう取りに行こう」
……いいじゃん。それなら福岡じゃないとできないね。
最後のわたしの返答は、果たして声に出ていたのか。
まあどっちでもいいか。起こしてもらったら、もう一度言おっと。
2025/08/04 投稿作品
1年以上前、身近なリリスバ創作者の間で密かに旅行合同の話が持ち上がり、
その後関係者全員が馬鹿忙しすぎて表に出ることなく流れてしまったことがありました。
本という形で世に出ることはありませんでしたが、
既にいくつかの作品は完成しており、出すタイミングを見失い続けていました。
このタイミングで出したのは何か特別なきっかけがあったわけではなく、
単に「執筆に使っているメモ帳がパンパンになってきたから蔵出しした」という
本当にしょうもない理由だったりします。
今では別のコンテンツの話をすることが多いですが、
勿論、別にリリスバが嫌いになったわけではありません。
好きな作品が増えて、推しと呼べるキャラクターやCPが増える程、
リリスバという組み合わせにしかない魅力が深く理解できるもの。
今回は執筆済の作品を蔵出ししましたが、
余裕ができればまた2人に関する新規の作品も書いてみたいですね。