嘘と空箱

 4月1日、火曜日。
 ぼんやりとした目と頭のまま、枕元のスマホを手に取る。時刻は午前9時。いつもより少し遅い、そんな朝だった。
 小さく欠伸をしながら布団から出れば、ひんやりとした空気が思考を覚醒させていく。目に入ったお野菜さんたちはカーディガンを着て暖かそう。そろそろ衣替えかと思ってたけど、もう暫くはお世話になることになりそうだ。
 カーテンを開けば、相変わらずの曇り空。いっそ雨や雪でも降ってくれればまだ思うところもあったのに、なんて思いながら、わたしは大きく伸びをした。

 いつも通りの部屋。いつも通りの空。いつも通りのわたし。
 4月1日——3年生として最初の朝は、そんな、あまりにも何も変わらないものだった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 ジャージに着替えて、ストレッチをして、そして外へと繰り出し、走る。少し起きる時間が遅れた程度じゃ変わらない、わたしのいつものルーティン。
 皆で話し合って、スクールアイドルクラブの活動は1週間程お休みを取ることになった。配信などは別途検討するけれど、新年度と新入生に備えてまずは心の整理をしつつ英気を養うのが目的だ。
 とはいえ個人的には、変に休もうとして日課をこなさない方が不安を覚えてしまうので……結局休みであろうがなかろうが、いつも通りの過ごし方になってしまうのだけど。

 一通り走り終えて、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べる。お昼が近いので気持ちごはんを控えめにした以外は、これまた普段と何も変わらない流れ。
 消えてしまったルーティンも、無いわけではない。少なくとも綴理先輩を起こしに行ったり、お弁当を作ったりといったことは今日はしてないけれど……そもそもそれらも毎日やっていたわけじゃない。お休みの日は基本的にいくら寝たって先輩の自由だし、お出かけの予定でもない限りお休みの日にまでお弁当はいらない。……今この日だから欠けてしまったように見えるだけで、別にこの穴が空いた日常ですらも、わたしにとっては「いつも通り」に収まってしまうものだった。

 食器を洗って、部屋に戻って、今日の分の宿題に手をつける。
 時計を見ればあっという間に11時。普段は10時には十分落ち着くことを考えれば遅い方だけど、どうせ今日はやることもないし問題ないだろう。
 ……こうして、慣れていくのだろうか。案外何も変わらない1日を繰り返す中で、ぽっかりと胸に開いてしまった穴も埋まっていくのだろうか。あの時叫んだ想いも、歌詞に書き殴った激情も、こうしてあっさりと懐かしい思い出に変わっていくのだろうか。……変わってくれない毎日の中で、わたしだけが、変わっていくのだろうか。

 不意に我に帰って、1つも進んでいない宿題に気がついた。途端に何だか急にやる気がなくなってしまって、椅子を立ってはアボカードさんを抱えてベッドに飛び込む。
 早いこと宿題を終わらせて書類仕事もしないといけないのに。こんな調子では小鈴さんに合わせる顔がない。……なんて普段なら思うけれど、当の小鈴さんは本日お出かけ中なので問題なし。「寂しさ悲しさを紛らわせるために吟子ちゃんと姫芽ちゃんと遊び倒します!!」なんて言ってたから、宣言通り今頃目一杯遊んでいるはずだ。
 件の先輩方は、息つく間もなく進学や海外挑戦の準備に取り掛かるらしい。普通の卒業生が3月ほぼ丸々準備に充てるところを、全部スクールアイドルクラブでの時間に費やしてきたのだ。大急ぎで準備しないと追いつけない。……だから「せっかく春休みなんだから1日くらい」なんて我儘は、流石に皆飲み込むことにした。
 それぞれが思い思いの新年度を迎えている。瑠璃乃さんは、今日は1日ゆっくりするって言ってたっけ。花帆さん曰く大量の漫画や本を部屋に溜め込んでいたらしいし、本当に朝から晩まで徹底的にオフモードで過ごすつもりなのだろう。

「……花帆さんは」

 花帆さんは、どうするんだろう。
 思えば他の人の予定について話したりはしたけれど、花帆さん自身の予定は聞いていなかった気がする。過ごし方は人それぞれ。別にどう過ごそうが本人の自由だけれど……何となく気になった。何となく、話したくなった。
 彼女のいる場所にもぼんやりと想像がつく。アボカードさんを定位置に戻したわたしは代わりに、これまたいつもと変わらない制服を手に取った。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 春休みの校舎。学び舎としての役割を少しの間肩から下ろしたその場所は、それでも尚普段通りの活気に満ち溢れていた。運動部の掛け声、吹奏楽部の演奏、合唱部の歌声。……声の数が少し減っているように感じることに後から気付きながら、わたしは目を瞑っても行けるようになった部室までの道のりを歩く。
 鍵は既に誰かが借りていた。わたしが持っていないのなら、持っている可能性があるのは今日1人しかいない。
 職員室から2分も歩けば見慣れた扉。物音は聞こえないけれど、部室の電気は点いている。一つ深呼吸をして手を触れれば、案の定目の前の扉は抵抗もなく開いた。

 ——目当ての花は、部室にただ佇んでいた。定位置となった席で、ただ窓際の花瓶を眺めていた。部屋に香る林檎の香りは、手元のティーカップが纏うものだろうか。……誰かの面影を纏いながら、小さな背中は、ただそこに佇んでいた。

「あれ!? さやかちゃん!?」

 わたしに気付いた花帆さんは、いつもみたいに目を丸くする。さっきまでの面影はどこかへ消えて、普段の見慣れた花帆さんが現れた。

「なんで!? 今日練習ないよ!?」
「それはこっちの台詞ですよ。……それ、素敵な香りですね」
「あっ、これ? えへへ。いいでしょ、カモミールティー! さやかちゃんにも淹れてあげるね!」

 慌ただしく席を立つ花帆さんにどこか安心感を感じながら、彼女の座っていたその向かいの席につく。少し手持ち無沙汰になってスマホに目をやれば、ちょうど小鈴さんからメッセージが届いたところだった。

『さやか先輩、聞いてください!! 徒町遂に身長が2メートルになりました!!』

 ……そういえば、今日はエイプリルフールでもあったっけ。去年はわざわざ配信でまでネタにしたというのに、今年は直前までばたついていたのもあってすっかり忘れていた。

『それは大変です! 今日は休みのつもりでしたが、大急ぎで衣装を作り直しますね!!』

 折角だし、少し茶目っ気を出した返信をしてみる。すぐに既読がついて、そこから1分。

『さやか先輩ごめんなさい!! 徒町本当は152センチのままです!!』
『エイプリルフールです!! 嘘なんですさやか先輩!!』
『ごめんなさいさやか先輩!! ゆっくり休んでいただいて大丈夫ですので!!』
『もちろん分かってますよ。ごめんなさい、わたしもちょっと嘘をついてみたくなっただけなんです』

「なんだか楽しそうだねぇ、さやかちゃん」

 そんな花帆さんの言葉で我に返ると同時に、目の前に置かれるティーカップ。ほのかに香る林檎の匂いは、カモミールって言っていたっけ。

「小鈴さんからメッセージが届いてたんです。身長が2メートルになったって」
「あぁ~、今日エイプリルフールだもんねぇ」
「そういえばそうだったなって、わたしもそれを見て思い出しました」

 そんな他愛のない話をしながら、淹れていただいた紅茶を一口。

「……おいしい」

 香りと共に広がる、ほんのり甘くて優しい温かさに、思わず笑みがこぼれる。向かいの席に座り直した花帆さんは、とても鼻高々だった。

「なんてたって、梢センパイ仕込みの技術ですから!」
「ふふっ、流石ですね。ずっと練習していたのは知っていましたが、まさかここまでとは」
「いやぁ、大変だったよ……。でも、ちゃんと合格貰ったから! このポットとティーカップはその証!」

 ……そういえば、そういう話だったっけ。紅茶の淹れ方を勉強して、最後に試験に合格出来たら、梢先輩のポットとカップを部室に置いていく。梢先輩からも、そういう話になっていると聞いたことがある。
 部室の端に目を遣れば、ぺきんだっくが昨日までと同じようにぼんやりと佇んでいた。今ではもうすっかり珍しくなってしまった、2人だけの部室。積み重なってきたものと、遠くなってしまったものを、カモミールの優しさに任せてもう一度、飲み込んでいく。

「……3年生になっちゃったね」
「そうですね。遂にわたしたちも最高学年です」
「あんまり実感ないなぁ。だって、一昨年の沙知センパイだよ? 生徒会長だよ!?」
「流石に沙知先輩と比べるのは荷が重すぎる気もしますけどね……」
「結局今日もいつも通りの朝だったしね。3年生最初の朝なんだから、もっと特別なことが起きたっていいのに」

 静けさの中に、2つの声だけが響く。人の少ない部室は、こんなにも声が響く場所だったか。

「さやかちゃんは、ちゃんと3年生できそう?」
「はい。ずっと覚悟はしてきましたから。……花帆さんは?」
「……うん、あたしも大丈夫。蓮華祭も完璧だったし、センパイたちともたくさんお話できたし、それに約束だってしたんだもん! きっと皆で、またライブをしようって!」
「そう、ですね」
「それに……今日だって、いつも通りの朝だったから。だから、きっとあたしは、大丈夫」

 ……本当に、そうですか?
 一度飲み込んでしまったそんな言葉は、吐き出されることなく胸の奥に落ちていく。
 そんな掻き消えた言葉を見透かして拾うかのように。わたしの瞳を静かに捉えた両目は、また誰かの面影を重ねながら、ゆっくり細められた。

「……ねぇ、さやかちゃん。うさぎってね、本当は寂しくても死なないんだよ」
「えっ……?」
「寂しいと死んじゃうって、嘘なんだ。昔の人が勘違いしたのが広まっちゃっただけなんだって」

 一瞬だけ、口を真一文字に結んで……すぐにまた笑顔になった花帆さんは、立ち上がってはくるりと一つ、おどけて回ってみせる。

「だから、花帆だって死なないのです! 寂しくても、悲しくても、明るい未来を生きるのです!」

 ……どうせ、寂しくたって、死ねないから。
 そう小さく呟いた花帆さんは、それでも尚笑っていた。

 口許が震える。何かを言おうとして、けれども何も音が乗らない想いが小さなため息になって消える。当たり前だ。ここに乗せるべき言葉は、さっき飲み込んだばかりじゃないか。
 自分一人の想いならどうにか飲み込めたはずなのに、鏡合わせに写ったみたいな悲痛な笑顔が苦しくて苦しくて、なのにそれでも声が堰を超えない。胸が張り裂けそうなほど痛いのに、わたしだって同じなのに、それでも前に進むという強がりが、きっと慣れるという諦念が、わたしから言葉を奪っていく。
 綴理先輩なら、別に言葉なんてなくても寄り添えただろうか。梢先輩なら、慈先輩なら。無理やり押し込めたそんな想いすらも引きずり出して、なのに今一番欲しいものだけが見つからない。隠された想いの一つも支えられないなら、この一歩で届く距離さえも寄り添えないなら、わたしは、あまりにも――!

 ――視界の端で、スマホが再び明かりを灯す。通知の中のアイコンが、小鈴さんからの返信だと教えてくれる。
 ……ああ、そうだ。そういえば、今日は。

「……死んでしまっても、いいじゃないですか」

 時間にすればたった数十秒。体感にすれば永遠にも似た時間。ようやくのことで吐き出した言葉は、思っていたよりもずっと強く世界に響いた。目を見開いた花帆さんの顔が、次第に少しずつ、ぼやけていって。

「さやかちゃん……?」
「花帆さん、今日はエイプリルフールですよ? どれだけ嘘をついたって許されるんです! 寂しくて死んでしまうなんてそんな嘘、誰も怒りなんてしないです。……ねえ、そうでしょう!?」
「さやか、ちゃん」
「だから、いいじゃないですか……。本当は死にやしなくても、寂しくて死にそうだ、貴女たちのせいだって! ……そんな嘘だって、きっと許してくれるから……!」

 ……ああ、もう。言葉以外は、吐き出したくなかったのに。子供みたいな我儘だって、理不尽な恨み言だって、全部ぜんぶ、昨日に置いてきたつもりだったのに。
 何もかもわざわざ引っ張り出してしまった心の中で、一番奥に隠していた透明が、両目から溢れて止まってくれない。

「……許すって、誰に許してもらうの?」
「……神様とか……」

 あたたかくて、綺麗な声。少しだけ震えていたそれは、だけどとっても優しかった。……本当に今日はことごとく上手くいかない。ただ花帆さんに寄り添いたかっただけなのに、わたしが優しくしてもらってどうするんだ。
 それでも彼女の声が今日一番嬉しそうに聞こえたのは、それすらもわたしの都合の良い嘘だっただろうか。

「……じゃあ、今くらいは、我儘なウサギさんになっちゃおうかな」
「それがいいです。……どうせわたし以外、見てませんから」
「神様は見てるって話だったじゃん!?」

 そんなしょうもないやりとりを投げ合って。
 そうして一つ、呼吸を置いて。

 どうしようもないくらい、わたしたちは。
 声を上げて、2人泣いた。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「……すっきりしましたか? 花帆さん」
「ぜんっぜん!! さやかちゃんは?」
「わたしも、全然です」
「あはは、全然ダメじゃん!」

 どれだけ時間が経ったのだろう。案外、大した時間は経ってないのかもしれない。
 真っ赤になった顔と目と、少し掠れた声で笑う。全然ダメだと言いながらも、花帆さんの表情にはいつもの明るさが戻っていた。

「うん。……でも、大丈夫。あたしきっと、生きていけるよ」
「それならよかったです。明日からは、もう嘘はつけませんから」
「そう、嘘は良くない! だからこれはわたしとさやかちゃんだけの秘密だよ!」
「ふふっ、そうですね。それなら……」
「おーっ、やっぱりここにいた~!」

 2人の話を遮るように部室の扉が開く。見やればたくさんのビニール袋を持った瑠璃乃さんが、ほんのちょっとだけ肩で息をしながら立っていた。

「……まあ、瑠璃乃さんならセーフか……」
「瑠璃乃ちゃんならセーフだね」
「おっ、なんだなんだ? というかなんだか上品なもの飲んでるねぇ。荷物半分でよかったかもなぁ」

 テーブルに置かれたビニール袋の中身は、たくさんのお菓子にジュース。ひょっとして、この寒い中わざわざ買ってきたのだろうか。かじかんだ手を擦りながら温める瑠璃乃さんは、制服こそ着ているけれど、髪は下ろしているし眼鏡も着けたままだった。

「ふっふっふっ……瑠璃乃ちゃんにも淹れてあげるね、梢センパイ仕込みのカモミールティー! ……というかあたしたちのも冷めちゃったし、皆の分淹れてくるね!」

 そんな花帆さんの言葉で、完全に湯気のなくなったティーカップに気付く。やっぱりなんだかんだ時間は経っていたのかもしれない。一度出て行った花帆さんと紅茶を待ちながら、瑠璃乃さんの持ってきたお菓子たちを袋から出していく。

「……瑠璃乃さんは、優しいですね」
「いやいや、ルリが食べたかっただけだよ? ソロ活って、充電は回復するけどお腹は減るんだよねぇ」
「それもですけど、そうじゃなくて。……目、真っ赤でしょう? わたしたち。普通は何があったか気になりますよ」
「……はてはて、何のことやら」

 チョコレートと、ポテトチップスと、ミニドーナツと。3人どころか9人でも食べるのに苦労しそうな量のお菓子がテーブルに並びきったころ、花帆さんが林檎の香りと共に戻って来た。
 頂いたカップを口につければ、さっきよりももっと温かくて優しい甘み。不意にまた涙が零れそうになって、流石に駄目だとぎゅっと目を瞑った。

「さて……ようこそ瑠璃乃ちゃん、秘密の花園へ」
「えっ、何急に」
「瑠璃乃ちゃんもいろいろ積もる話があるでしょ? いいんだよ、何言っても……。なんてたって今日はエイプリルフールだからね!! どんなことを言っても嘘になるからね!!」

 カップを構えてドヤ顔の花帆さん。わたしが言うのもなんだけど、とても数分前まで大泣きしていた人とは思えない。そもそもその理屈を言い出したのはわたしだ。どうやらキメ顔で人の受け売りができるくらいには調子が戻って来たらしい。
 一方で突然秘密の花園に迷い込んだ瑠璃乃さん。上品にゆっくりと紅茶を一口頂いて、心底面倒そうな顔でため息をつく。

「ルリ、そういうの後々信頼失うことになるから良くないと思う」
「あれっ!? 思ったよりドライ!?」
「花帆さん。エイプリルフールを安易に免罪符にするのは良くないですよ」
「さやかちゃん!? 嘘でしょ、さやかちゃんはこっち側の人間じゃないの!?」

 信じられないものを見た目で頭を抱える花帆さん。数瞬の後、耐えきれなくなったわたしたちは真面目な顔を崩して思わず吹き出した。からかわれていたことに気付いた花帆さんも、もーっ、なんて言いながら目を細めて笑う。

「ごめんごめん、冗談だよ花帆ちゃん!」
「ほら、今日はエイプリルフールですから」
「本当にダメだよ2人とも! エイプリルフールを簡単に免罪符にするのは!」
「あはは! ……うん、でもそっか。それならちょっとだけ、ルリの泣き言も、聞いてもらおうかな」

 瑠璃乃さんの言葉を受けて、花帆さんと二人目を合わせる。エメラルドグリーンの瞳が一瞬潤んで……だけどぎゅっと目を瞑った彼女は、その雫を、一度押しとどめて輝きに変えた。

「もちろん! ちょっとと言わずいくらでも言っちゃおうよ!」
「はい。今日は何を言っても許されますし……ここでの出来事は、3人だけの秘密ですから」

 ――案外変わってくれない世界の中で、素知らぬ顔の「日常」が、わたしたちのかたちも変えていく。
 傷に思えるこの痛みも、穴に思えるこの苦しさも、いずれ小さくなっては愛しい痕になっていくのかもしれない。そうしてわたしは3度目の季節を、新たな日常と共に巡るのかもしれない。
 それでも痛いと思っていたいのだ。それでも苦しいと思っていたいのだ。慣れてしまったと簡単に言うには、あの星の煌めきが、9人で見たあの景色が、あまりにも眩しくて消えてくれないから。だから、欠けてしまったこの日常の欠片も、次の日常に持っていく。いつか嘘だと笑える日まで、嘘に隠して抱えていく。

「でもその前に、さやかちゃんはそのメッセージに返信してあげるべきだとルリ思う」
「ああっ!? 忘れてた間に小鈴さんからのメッセージがこんなに!?!?」

 わたしは今日も、春を歩く。
 変わってしまったものを羽織って――それでも変わらない、愛しい景色と一緒に。

- Afterword -
2025/04/01 投稿作品

ストーリーが更新される度、この作品を完成させるべきか毎回悩みました。
本編との整合性も上手くとれないこの話をわざわざ世に出す意味はあるのか。
笑って前を向く彼女たちの想いを、否定してしまうことにならないか、と。

最終的には今抱えている想いを残すために完成・公開を決めました。
なのでこの作品はただの私の戯言です。
彼女達にもそんな想いを抱えていて欲しいという、体のいい我儘です。
衝動に任せつつ大急ぎでAFに間に合わせたせいで、作品自体も随分と荒削りなものとなってしまいました。

4月1日、エイプリルフールが昔から大好きです。
「嘘」という枠を超えて、どこもかしこもこの日にしか存在し得ない幻で湧き立つ四月馬鹿の宴。
ただ今年から私の中で、この日にはもう一つ文脈が乗ったような気がしています。
物語のページが移り変わる日。1つの物語が過去になり、新たな物語が始まる日。
そんな寂しくも素敵な1日がにぎやかな宴で始まるのは、やっぱり、
どこまでも祝福に溢れていると思うのです。